『ただ片想いに戻っただけなんだ』
5、求める
『実久、おはよう。今日も可愛いな』



私を見つけると浩がいつものように、明るく声を掛けてくれた。



『おはよう』



私も少し大きな声で返した。




『また仕事が早く終わった時に、俺の地元にご飯食べに行こな。まだまだ美味しいもんあるからさ』




浩は笑顔でそう言って、私の背中をポンと叩いた。



私はニッコリ微笑み、




『うん、また連れてって』



と、答えた。





本当に、



本当に浩は、何も思ってはいないのかな。



ホテルにまで行っておいて、最後に拒むなんて。



怒ってはいないのかな。



ショックに思ってはいないのかな。



私のことを、本当に嫌いにはなってはいないかな。





だけど最後まではやっぱり出来なかったけど、




浩の腕に抱かれたとき、本当に幸せだと思えた。




男の人の腕の中はこんなにも温かく、安心出来る場所なんだと知った。




浩と一つになりたい。




だけど知られたくない。




嫌われたくはないから。




だけどこのままでいいの?




このままじゃ結果は同じなんじゃないのかな。




浩がいくら私を好きだと言ってくれているとしても、




このままじゃ、浩は自分には気持ちがないんじゃないかと感じ、




私から離れてしまうんじゃないのかな。




嫌だ。




そんなのは、絶対に嫌だ。




伝えなきゃ。




ちゃんと本当のことを伝えなきゃ。
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