ファンタジスタ マジシャンズ
プロローグ
溶けている。
それは、ダラリといったように溶けていた。
脳みそは、湯煎したチョコレートのように素晴らしく溶けきっているのではないだろうか。
とりあえず、この物語の主人公である男はどうやら溶けているようだ。

「…澪(レイ)」
「…ん~」
「退屈だな」
「…ん~」
「……澪」
「…ん~」
「……」
「…ん~」
「…お前、起きてるか?」
「…ん~」
「そればっかだな」
「…ん~」
「……」
「…ん~」
「ってこの野郎!やっぱり寝てやがるなぁ?!」
「…ん~」
「起きろ!!この冬眠中の熊!!」

スパァン!!と豪快に、激しい音を立て澪と呼ばれた男の頭にハリセンが直撃した。
ハリセンは、普通に叩いたくらいでは音がする程度で、痛みなどはあまりないのだが、渾身の力を込められたハリセンが直撃すればさすがに痛いわけで…。

「っ痛いじゃないか!!優輝!!」
「当たり前だ!!痛くなるように殴ったからな」
「何で殴ったんだ?!」
「んなもん、大事な卒業試験の説明会のとき寝るからだろうが!!」
「だからってハリセンはないじゃないか!!」
「ここにハリセンがあったからな」

いや、何でハリセンを持っていたんだ。
そんな二人のやりとりを見ながら、壇上にいた一人の校長が、思い切り咳払いをした。
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