桜から君が降ってきた。


この心臓の音が聞こえていませんように、と思いながらかすみちゃんの隣を歩いた。




「『ようこそ、優ちゃん!!ツアー』、出発しまーす!」


先ほどの男子の号令で、縦列となったクラスメイトたちは歩き始めた。



歩き始める前から、何故かクラスメイトたちは僕とかすみちゃんを交互に見てニヤニヤしていた。


かすみちゃんはというと、そんな彼らの視線などどこ吹く風、といった風情で楽しそうな顔をしていた。



「はい、まずは正門前ー、正門前ー。」

「バスかよ」

「いーじゃん、ノリだよノリ。」


初めてこの学校にパパと来たときに見た場所に来た。


「ここがこの学校の初等部の“顔”みたいな所でね、学校案内のパンフレットなんかにはここからのアングルの写真がよく使われているの。」


「へえ…」


確かに、立派な門を前にしたバックには、煉瓦造りの校舎や林立する桜が良い感じで見えて、“顔”と呼ぶに相応しい場所だと思った。



それから、中庭や、中等部の見える場所、グランド、プール、体育館、図書館などを案内してもらった。


どの場所でも、かすみちゃんは詳しい説明やウラ話を聞かせてくれた。



「すごく詳しいんだね、かすみちゃん…」


感心して、興奮気味にそう言うと、かすみちゃんはちょっと笑って「まあね。」と言った。



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