☆ハイローハート
さやかの怪我はどんどんと良くなっていって

リハビリも、医学療法士の先生が「若いから治るのが早い」と驚いてるくらいだし

もうすぐ2年生になるし

気持ちも新たに……

って、俺のわがままか……


「骨折って、ホントに不便だね
これから気をつけなきゃ」

とすっかり動くようになった腕や指を開いたり閉じたりしているさやかが、俺に手を差し出した

その手を取って、血流が良くなるように優しく撫でてマッサージ

「治ってよかったよ
もうほとんど元通りに動くよな?」

「うん、なんか色々お世話してくれてありがとうね」

「……いや、半分は、俺のせいだし」

「さやかの友達がみんな“理一くん優しい~”ってうらやましがるから大変だったよ」


優しくするのは、冷たくするより簡単なんだよね


触れ合う手をギュッと握られると、俺の指の間に彼女の指が割り込んでくる

それだけで言葉を失ってしまう俺は、優柔不断なのかな

それとも、弱い?

それとも、ずるい?

“別れない”と言われているみたいに手をつないで歩いていると、4車線の車道を挟んだ向こう側にとよきとあこの姿が見えた

……今日、会うって言ってたっけ?
いや、別に俺に報告する義務はないし、報告して邪魔されるくらいならって事でとよきは言わないつもりかもしれないし


さやかは気付いてない

とよきとあこも気付いてない

あこは背の低い女ではないけれど、とよきはそれよりデカイから、信号待ちであこの肩にひじを置いた

ひじ置きにされたあこが怒ってその腕を叩こうとすると、とよきがひらりと避ける

避けられてイラっとしたのか更においかけて叩こうとすると、またスカッと空振り


何やってんだ、あいつら

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