☆ハイローハート
今日サリーがはじめて家に来た日のことを思い出したのは、何かの予兆だったのかな


その日の夜、パパが夜遅く帰ってきて、リビングでサリーと並んでテレビを見ていたアタシは「おかえり~」と時計を確認した


パパはネクタイを緩めつつ、サリーを目を細めて見ている

「あこは覚えてるかな、サリーの元の飼い主」

「もちろん」

「彼女、離婚したらしい」


……へえ、それはそれは


サリーは何食わぬ顔でパパの足に一瞬体をこすりつけて向こうへ行ってしまった

どこか心を閉ざし、どこかで心を開きたがっている彼女らしい甘え方だった

その凛とした後ろ姿にかけよって抱きしめたいけれど、そんな事をすれば絶対「シャッ」と怒られる


アタシの意識は今日二回目の中学1年生にトリップした


サリーがうちに来た理由を聞いた時、アタシは保健所に連れて行かれずに助かった一つの命を本当に愛おしく思うと同時に、人間が大嫌いになった


サリーを保健所に連れて行こうとした女は、一つの命を抹殺して結婚したくせに、いつか人間の子供を生むのだろう

その命と、サリーの命の重さに違いはあるんだろうか


動物の命より、人間の命は重いのか??


中学生のアタシはその夜、慣れない部屋の片隅で人の様子をうかがっているサリーに「美人だね」と声をかけた

そして、なんとも言えない複雑な思いを抱えて夜空の星に願いをかけた



「寿退社した女がどうか不幸になりますように」



数年たった今、アタシは彼女が離婚したことを知っても、まだ祈る



「命を粗末にした女に、どうかもっと不幸を」



サリーと初めてであった中学生のアタシは、高校生になってサリーのように心のどこかを閉ざした女に出会うことはまだ知らなかったのだけれど


今となっては思う


サリーとであったのも、モロに出会ったのも、多分必然なんだって





「ハイティーン」の巻





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