☆ハイローハート
Misfortune
「智に働けば角が立つ 情に棹させば流される」

今日の国語の授業で教わった言葉が妙に心に痛かった

夏目漱石の、なんていう小説の冒頭部分だったっけ??

スマホを操作しながら改札口をみると、そこにいた人物があからさまに目をそらす


その姿を見てアタシがまず第一に思ったのは

謝りにくるなら、最初から折れてりゃいいのにってこと


改札口を出ると目の前にたって、「送ってく」とアタシの前を歩きだしたとよきが両手をポケットにつっこんでいるから、なんとなくまだ怒っているんだとわかる


駅周辺をはずれるとあっという間に静かで暗くなる


「どんな相談だったか聞く?」

「別にいいよ」


んじゃ、もういいんだ、この話は


何、ただ、送りに来たの??

自転車があるから、別に危なくもないのに


古い自転車のブレーキをたまにキィキィ言わせながら押して、とよきの背中を変な思いで追っていた

歩く音まで不機嫌っぽい


「まい……ちゃん、とつきあってた時はさ、男が女を送っていくのが当たり前とか、休みの日はデートするのが普通だとか、世の中的に男は彼女にこうするもんだっていうルールどおりに接してたんだよ」

「あ、そーなの?
それで迎えにきてくれたんだ
いいよ、アタシにはそんなルール適用してくれなくて
勝手に適当にしてるからさ」

「そーじゃねえよ……」


とよきはこっちを見もせずに話しのスピードに合わせた速度で歩いて行く


「っつか、勝手に適当にするな」

「そう言われても」


「ほんと、お前は黙って人の話きかねえな」

「そりゃ失敬」

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