☆ハイローハート
梅雨入り宣言のニュース

窓の外は快晴
夕方から降るらしいけど、それはひとまずおいといて

時計の針は変わらず時を刻んでいて、俺を未来に運んでくれる

結局ケータイはスマホに機種変できないままだったけど、それもひとまずおいといて

あこの家の前で“ピーンポーン”と鳴らして、出てきたあこは編み目の粗いボレロとショートパンツにニーハイソックスとヒールの高いパンプスで、グッチのかばんをナナメがけしていた

「とよきも行くの?」

「とよきは、モロがマンションに帰ってくる頃にこっち来るって
今日スイミングでしょ?」

「ああ、そっか……
アイツ、休みの日は絶対スイミング行ってんもんな……」

「もうとよきの場合は水中で生活した方がいいよね
ビーバーみたいに」

あこは自分で言ってウレシそうに笑っている


休日の午後
幼なじみとテンション高く電車に揺られて向かうは空港

MJは俺らが乗っている電車に途中から乗ってきた

会うのは、MJハウスでの一件以来


久々にあった彼女は、また一段と雰囲気がかわっていた

……触ると切れそうなオーラ、妖艶さは残っている

前までは「関わってくるな」と無言の威圧感を感じていたのに、今は「関わってくるな」って言われてもなんか、ちょっと触ってみたいような……

なんか、“ペンキ塗りたて”って書いてあるところを指先でちょっと触ってみたくなる衝動に似てる


ワンレンだった前髪は目の下あたりの長さまで切られていて、すっと横に流している

そして、片側だけ顔の周りの髪をねじって黒のピンで留めているんだけど、左右対称じゃないその髪型がまたMJっぽくて思わずじっと見てしまった


「立っていると景色がよく見えるわ、心が洗われる
まあ、私より心を洗った方がいい人は他にいるけれど」


俺とあこの前でつり革につかまっていたMJが無表情に首を傾げた

俺に、言ってるんだと思う……確実に

いつのまにか車内のイスは全て埋まっていて、俺はあわてて立ち上がると「どうぞ」と彼女に譲った


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