☆ハイローハート
とっさにひざかけを持って行ってよかった

カブが目覚めたとき、あれがあればちょっとは落ち着いていられるかな??

あのひざかけには家の匂いが、家族の匂いがしみついている


エレベーターを降りて、もう一度涙を拭うと「あこ!!!」とデカイ声が耳をつんざいた


――モロ


「どーしたん??
どこ行ってたん??
カブは??」


……なんでカブのこと知ってんの……

すっかり熱くなった目をあげると、駆け寄ってくるモロの後ろにとよきがいる



そういえば、とよきと電話中だった


きっと電話越しにアタシがあたふたしているのが聞こえて……来てくれたんだ


「とよきが真っ青な顔してうちに来るからめっちゃビックリして
あこの家来たら鍵あきっぱなしやし
カブおらんし……!!
ケータイころがってるし」


モロがひっきりなしにしゃべりつづけて、頭がごちゃごちゃしてくる


とよきは(うるさい)とでも言いたげにモロの事を押しのけると、アタシの顔をのぞきこんで、大きな手で頭をヨシヨシヨシって撫でると……


ふわっと抱きしめてくれた


とよきはでかいから、耳に直接聞こえてくる心音がアタシをどんどんと穏やかにしていく


ヤバ

男の胸で泣くなんて、ガラじゃないんですけど


なんて思う間もなく、カブが酸素吸入している姿がまぶたの裏に甦って、大泣きしてしまった




「High&Low」の巻



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