☆ハイローハート
「チャリ乗っていこ!乗せたるから」

とモロがアタシの自転車の鍵を持ったけれど、「ちょっと待って、ママの自転車なら後ろに荷台がついてるから」と伝えた

玄関に置きっぱなしの「ママチャリ」と書かれたネームキーホルダーがついた鍵をとったモロが玄関のドアをあけてくれる


エレベーターの中で、今日は何曜日だっけ?今何時?と考えた

病院に行ったのに、先生がいなきゃ困る……っ


駐輪場でほこりのかぶったママチャリを見つけると、モロがそれを勢いよく引っ張り出して乗った

その荷台にカブを抱いたまままたがると、「ドラッグストアの近くの病院やんな?」と確認して走り出す


カブはアタシの腕の中で息が荒いまま


「カブ、大丈夫だよ、すぐ楽になるよ
すぐ息できるようになるからね」

安心できるようにそっとしっかり抱き寄せる


……この病気はね、あからさまに症状がでて病院に来た時にはすでに重篤な状態に陥ってるのがほとんどなんだよ
薬で溶かして安静にしていても、血栓はすぐに再発してしまうし
うーん、次発作が起きると、ちょっと怖いかな

おじいちゃん先生の言葉


カブは細く、短く、息を続けていた


小さな体を少しだけ上下させて


……カブ

おいしい缶詰は、まだ家に何十缶もあるよ?


「カブ……」

目の端にドラッグストアの看板が大きく通過して行った


「もう病院見えてきたからな」

超高速で流れて行く町並み


「モロ、カブが、息してないかも」

泣いて上手にしゃべれなくなったのは生まれて初めて


「もう、病院は目の前やってば……!!」

そう答えるモロの声も切れ切れで、彼女の髪が横風に吹かれて流れると、首を伝う汗が見えた 




「Good night&Sweet dream…」の巻




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