☆ハイローハート
今度は理一がキョトンとしている

「あこと一緒の事言ってるよ……
もしかして人間のこと嫌い??」

あの女とアタシが似ているのは、もう既にわかってる
あこもきっと気付いてる



……あの子も、人間嫌いやったんか



と、ため息をついたら、


「お、はじまったはじまった」


どちらかというとシリアスな話をしていたと思うのに、理一は突然テレビに顔を向けると嬉しそうにソファーに座りなおした

『エキサイトマッチ~世界プロボクシング』

画面に大きく映し出される文字


「次ボクシングなんだよ~
最強マニーパッキャオって、俺名前聞いたことあるけど、はじめて見るっす
ドキドキ」


……ドキドキって

まだ、うちでテレビ見るつもりかこの男!!

拍子抜けして、アタシはそそくさと動き出した


「あこと一緒でみさきも一匹狼っぽいねえ……
ま、俺はそんな女の取り扱いに慣れてるから大丈夫大丈夫」


理一の後頭部を見たまま止まってしまった

“取り扱い”って

言われたことのないセリフ
であったことのないタイプ

ドキドキと動揺しだすのがわかって、自分のいつもどおりの生活をしようとバスルームにお湯を張りにいく

キッチンに戻ってくると、理一は冷蔵庫をあけて難しい顔をしていた


「何もねーな……、お!カルピスあるじゃん
な、ホットカルピスのまねえ??」


……シュンシュンシュンシュン


と、アタシは再びお湯を沸かし、来客にホットカルピスを提供した後、彼のことは放置してバスルームにこもった


のんきにエキサイトマッチを最後まで見て、お礼の一つでも言って帰っていくのかと思いきや

……いや、スカートをもらったのはアタシなんだけれども


「んじゃ、また来るっす」


理一は玄関先で敬礼一つ

謎の言葉と

次来る予告と

爽やかな余韻を残して帰っていった



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