☆ハイローハート
ピーーーーーン……


……ポーーーーーン


ほんま、変わった鳴らし方するな

アタシは着かけの部屋着のトレーナーにあわてて袖を通した
制服のスカートはまだ履きかえれていない

玄関の覗き穴から確認してから、風圧で重いドアをあけると理一がコンビニの袋を突き出した

「今日は何?」

「シュークリーム」

アタシが開け放ったドアから入ってくると玄関で靴を脱ぐ
アタシの中途半端な格好を見て「今帰ったばっかり?」と聞いてきたから、うなずいた

早速テレビ前のソファーに座ってリモコンを操作すると、ジャストオンタイム
最近理一イチオシの「ジ・アルティメットファイター」がはじまる

紫のトレーナに制服のスカートのまま、理一と自分の分のジュースを入れ、コンビニの袋からシュークリームを二つ取り出した

彼はテレビを見せてもらうお礼のつもりなのか、必ず何か手土産を持ってきてくれる
ソファーに座ってテレビに夢中の理一と、ダイニングテーブルに座ってなんとな~くテレビを見るアタシ達は、黙ってシュークリームを開封した

テレビの邪魔になるかと気遣って会話はしない

いわばマンネリカップルのような距離感で過ごしている


「あの状態から、立つか~!!」


理一は、ファイターの技術面をほめることが多い


「うわ、あの背中……」


アタシはファイターの肉体美をほめることが多い


いつもはお互いの独り言として終わるのだけれど、今日はなぜか理一が食いついた

「背中がなんだよ」

「え?……いや、男やのに、キレイね~って」

「……」

……寝技で相手を押さえ込んでいる時にうごく背中の筋肉の感じとか……美しいじゃない?

ソファーの上で三角座りをして、ひざにあごを乗せた理一は再びテレビに集中しはじめた


「あ!オチる、オチる!!!!!」


理一が突然興奮し出してアタシも思わずテレビに目を向けると、首をきめられたファイターの意識が遠のいていくのがはっきりとわかって、レフェリーが慌ててストップをかけていた


< 63 / 756 >

この作品をシェア

pagetop