☆ハイローハート
落ちた本を重ねると、国坂君が「ダンシングダイエット……」と呟いてペラペラと本をめくった

腰フリダンスダイエットや、社交ダンスダイエットが写真つきで載っている

……社交ダンスって、1人でできひんやん


「これって、自動的に男も一緒にダイエットさせられるってヤツ?」

「ちょっと恥ずかしいな」


写真に写っているパートナーの男性の黒ズボンがあまりにパツパツすぎて、複雑な気分


「国坂くんも一緒にしてくれる??」

「…………俺、受験生だから」


と遠まわしな拒否

思わず声をひそめて笑ってしまう

確かに国坂くんのパツパツズボンはあんまり見たくない

「チークダンスダイエット……
チークダンスって、そんな激しい動きあったっけ?」

と国坂くんが言うから、笑っていた余韻を残しながら「チークダンス?チークダンスやったら焼肉屋さんで……」と言いかけてハッと止まった


ページをめくる国坂くんの手が止まってアタシの言葉の続きを待っている

……うっかり、口に出してしまった

次の句を継げないでいると


「ダイエットなんてする必要ないよ、みさきちゃんは今でじゅうぶんキレイだから」

と国坂くんは本をパタリととじて、落ちた本と一緒に書棚に戻した

本を拾うためにしゃがみこんだ体勢のまま固まってしまっていると、目の前にもう一度国坂くんがしゃがみこむ


「何も気にすることない」

と頭をポンポンと叩かれて、その手はそのままアタシの頬に添えられると軽く唇が重なった

チュッと優しく触れて離れて行く

立ち上がりそうになった国坂くんのシャツを掴み、膝立ちで彼の首に腕をまわすと、アタシを足の間に挟んだ態勢のまま彼は勢いでトンと床に座り込んだ


「国坂くん……」

国坂くんの目をじっと見つめると「大丈夫?」とメガネの奥の鋭い目が細められた……

何度もやわらかさを確かめるようにチューをする

優しく、しないで……
アタシの過去を塗りつぶすくらいに、全部色を変えて……

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