☆ハイローハート
ぶっ倒れている男を冷たい視線で見下ろす国坂くんの後ろから、胸に「国坂塾」って刺繍された白の胴着を着たデカイ男がやってくる


国坂くんに何か言われて、胴着の男は倒れた男をつま先でつんつんして肩をすくめた


国坂塾


モロが「国坂くんのおうち“塾”してたー、だからインテリ家系なんや~」って言ってたけど、それって、学習塾じゃなくって……格闘技の方の塾……なんじゃないの???


サイレンの音は未だやまない


少なくとも二台以上サイレンが鳴っている


「あこ姉!!救急車まだ??」


という龍一の声がして、ハッと室内を見ると視線の先でチラついていた赤がはっきりとその正体をあらわしていた


未だにモロは理一にしっかり抱きついているけれど、理一の腕はもうモロを抱いていない


彼女の肩にもたれかかって眠っているみたい


「みさきちゃんは?」


と国坂くんが聞いてきたけれど、足元に転がる物体の違和感が何なのか今更気付いて言葉を返せなかった


アタシの方に飛んできた時、危ないと思ったけれどすぐに大丈夫だと思ったんだ


だって、このカッターナイフには刃が……ない

その代わりに少しだけ血がついている


刃がないのに、どうして血がつくの


どうして刃がないの



涙でゆがむ視界に制服を着た警官と白衣の救急隊員が見えた





「Still Beating」の巻





< 658 / 756 >

この作品をシェア

pagetop