運命をかえよう
再会
何百年。否、何千年も前の話になる。
天使と悪魔を人々が信じていた時代。

その時代に神と契約を交わした2人がいた。片方は天使。もう片方は地獄を造り上げた堕天使。彼らの願いはただ一つ。それは、兄弟揃って生きていくこと。



雨の降る夜、一人の男が反逆地獄へと足を踏み入れた。その男は少し長い金髪を一纏めに括り、単衣の青い着物のは赤黒く染まっている。

それを気にも止めずに男は忙しなく翠色の瞳を動かしていたが、やがてその動きを止めた。
目の前に居るのは、黒い鎧を纏い青い髪をし、片膝を立てた状態で氷漬けになっている一人の男。
そっとその氷に触れ、何かの呪文を唱えだす。その呪文はその空間に響き渡るように空気が震え、やがて氷が溶け始めた。




何刻も男は唱えていた。

目の前にある氷が全て溶けるまで。
溶け終わった頃には、氷漬けになっていた男が黒い睫毛を震わせ、ゆっくりと瞼を開いて朱色の瞳を向けた。

「……ミカエ、ル?」

弱々しい声だったが、嬉しそうに笑みを浮かべられ、呪文を唱えていた男――ミカエルもそっと笑みを返した。
男がミカエルに、何故?と聞く前に答えを出した。

「俺たち兄弟はずっと一緒だと、約束をしただろう?」

その答えに笑みを返して、驕り高ぶった罰をお前から受けたんだぞ。と堕天使――ルシファーは弟に向かって呟くが、弟であるミカエルは納得しなかった。

どんな時にも共に有ろう。と約束した自分達は、神の掌で踊らされたのだと思ったからだ。
確かに自らの手で兄を堕とした。だが、その時は抑えきれない程の念に縛られているようだった。
自らの意志でコントロールが出来なくなってしまったかのように、思ってもいない言葉が口から溢れ出した。挙げ句、自分の兄をコキュートスに氷漬けにしたのだ。

「ルシファー、俺は…」
「今は何も言わないでくれ。…会えただけで嬉しいんだ」


その気持ちに偽りは無いと言わんばかりに穏やかに笑って見せて、改めてルシファーは自由になった己の四肢を動かしてみた。

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