その透き通る手で

ベッドに寝転んで、本のページをめくる。


晴れた空、雨の空、星空。

茜色、濃紺色、ピンク色。



レンは、どの空が好きなんだろう?



やっぱり、今日着てたシャツみたいな、明るい空かな。


両開きのページに、いっぱいの青空。
そこに浮かぶ鮮明な弓形の、虹。



レンは、虹は好きかなあ?



……そういえば。


どうして自分のことを話そうとしなかったんだろう。



トクン。



まるで棘が刺さったような、鈍い痛み。


わたし、レンのこと、知りたかったのかな?


……そうだよね。わたし、ずっとレンのこと考えてる。


だって、あんなに気になる人、生まれて初めてだったんだもん。


「……また、会いたいな……」


ようやく、わたしは素直な気持ちを言葉にした。


それはわたしひとりしかいない部屋で、ただむなしく響くだけだったけど。


「会いたいなぁ……」


虹のページに突っ伏して、目を閉じた。



せめて夢の中だけでもレンに会いたかったから。


< 15 / 76 >

この作品をシェア

pagetop