その透き通る手で
 声が聞きたかった。顔が見たかった。
 あんまり嬉しすぎるから、近くにいたら伝わっちゃうかもって思うくらい。


「でもよかった。ここ、最近物騒なんだよーひとりで帰るの怖くって」

「だと思うなら、こんな時間になるまで居残りするなよ。今日は俺が送ってやれるからいいけどさ」

「レン、送ってくれるの?」

「当たり前だろ? 夜道を女の子ひとりで歩かせるようなことはしないって。
ほら、行くぞー」


レンはそういうと、右手をわたしの前に伸ばそうとして――そのまま宙に泳がせた。

なにしてるのかな? って黙って見てたら、てのひらをじっと見下ろすとレンは手を引っ込めた。ポケットに手を突っ込んで歩きだす。


……もしかして、手を繋ごうとしてくれた?


 そう思ったら更ににやにやは止まらなくなって、わたしはユルイ顔したままレンの背中を追いかける。

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