君のためにできること
第六章
冬の寒さがじょじょに消え、春の暖かさが、空気を染めていく。

しかし、僕の心は晴れぬまま、まだ寒さに震えていた。春とは別れの季節とよく言うものの、あのまま君と離れていたほうが、傷つくことは少なかったのかもしれない。
でもやはり人が成長するためには、傷つき、その傷に包帯を巻くことによって強くなっていくと僕は思う。僕は幾度も、幾度も同じ部分に包帯を巻いてきたように思える。僕にとってその包帯が彼女だったんだ。

いいわけにしか聞こえないだろうけど、僕は彼女と会うことで君との関係を保っていた。


大学2年の春、それは、なんの前触れもなく突然一通のメールと共に訪れた。

受信ボックスのカテゴリー分けからは外れていたそのメールの送信者欄には”華蓮”と表示されていた。件名は、以前彼女に送ったが返ってこなかったメールの件名だった。

今更、返信として返ってきた。彼女らしいと言えば彼女らしい。その内容も、まるでついさっきメールを確認したかのような文面だった。

それから僕は彼女と本当の再会を迎えた。
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