さよなら、片思い【完】
いつの間にかベッドで寝ていた俺はお味噌汁と焼き魚の美味しそうな匂いで目が覚めた。


俺の隣には唯の温もりだけ残っていて、唯の姿は見当たらなかった。


「あっ、上原くん。起きた?」


ちょこんと寝室の扉を開けて顔を覗かせた唯は水色チェックのエプロンをつけていた。


「昨日突然呼んじゃってごめんね。しかもわたし先に寝ちゃって…上原くん、帰れなくて困ったでしょう?」


「俺を呼んだこと覚えてたんだ?唯、かなり酔ってたみたいだから覚えてないと思ったけど」


「所々は覚えてて…あっ、何か迷惑かけなかった!?」


「全然。唯の酔ってる可愛い姿が見られてよかったよ」


俺がそう言うと唯の顔は瞬く間に赤く染まった。


瞬間湯沸かし器みたいだな。


「酔ってるところなんて…恥ずかしいよ…」


「そんなことないよ。そのエプロン姿も新鮮でいい。可愛い」


「あっ…あの!朝ごはん、和食なんだけど、作たの。良かったら上原くん、食べていく?」


「うん、食べたい」


リビングに行くとそこには炊き立ての白米に出汁巻き玉子、鮭の塩焼き、ほうれん草の白和えとキュウリの浅漬け、豆腐と大根のお味噌汁が並んでいた。


「すごい。これ、全部唯が作ったの?」


「うん。上原くんの口に合えばいいけど…今、お茶入れるから座ってて」


ソファに座りテーブルに並ぶ朝ごはんを見つめる。


すごい。うちの両親は共働きで朝は忙しいからと昔から朝食はパンとヨーグルトとサラダの組み合わせで、こんな和食が出てくることは滅多になかったから。
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