さよなら、片思い【完】
上原くんはしばらく沈黙したあとゆっくりと口を開いた。


「由香里と知り合ったのは高校の入学式。あの頃からあいつモデル活動してたからちょっとした有名人だったんだ」


それから語られたこと。


上原くんと由香里さんは同じクラスで席も隣同士、仲良くなるのにそう時間はかからなかったそう。


「明るくて正義感強くて、だけど涙もろくて、かと思えば花が咲くように笑うんだ。感情表現豊かで見てて飽きないヤツで気付いたら好きになってた」


初めて聞いた上原くんの由香里さんへの気持ち。


「あの頃、俺も自惚れててさ。気持ちは伝えなくても由香里も俺のこと好きなんだろう、って思ってた。なのに充にかっさられた。情けないだろ?」


切ない顔をみせる上原くんにギュっと抱きしめた。


「唯?」


「わたしは…わたしは上原くんのこと、好きだから」


このまま抱きしめてないと上原くんが消えてしまいそうな気がして。


「ありがとう、唯」


ありがとう、という言葉より愛の言葉を聞きたい。


でもそれは言えない。


貴方が愛の言葉を伝えるのはわたしじゃない。


どう足掻いたってわたしは由香里さんになれないんだから。


それでも、貴方がわたしを愛してくれる理由が由香里さんの身代わりだとしてもこの温もりを与えてくれるなら


わたしは幸せなの。
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