ブルーローズ ~私が死んだ理由~
6.悪夢、再び…
 中学に入り、いきなり雪子と同じクラスになったのが悪夢の始まりだった。友達全員とクラスが分かれ、その後の転落に続く最悪の中学校生活がスタートする。
 皆からは「クサソウ(ク笹生)」と呼ばれ、出欠をとるたびにどこからか笑い声が聞こえてくる。誰ももう「忍ちゃん」とは呼んでくれない。「ササオさん・サソウ」と呼ばれる事が、耐え難い苦痛だった。
 雪子は級友をも巻き込み、いつしかイジメはクラス全体へと広がり、笑って過ごせる日など1日たりともなかった。何をやってもケチをつけられる。中学生なんて髪型はどれも似たようなものなのに、
 「マネすんなよ!」
 荷物が多いからと、小さめの缶に裁縫道具をコンパクトにして持って行けば、
 「裁縫箱じゃないから忘れ物だ」
 休み時間、廊下で里奈と話をしていれば「クサソウって教室にいる時は笑わないくせに、里奈ちゃんといる時だけ笑ってる」と、嫌みを言われる始末。
 親同士が仲の良い克典には蹴られ、「笑うと気持ち悪い」と言われた事で、私は素直に笑えなくなった。鏡の前で何度笑う練習を繰り返しても、その笑顔は人を不快にさせるものだと思うと、なるべく平常心を保ち、笑わないよう心がけた。堪えきれず笑ってしまった時は、セキをしてごまかし続けた。
 ところが今度は、
 「コイツって笑わねぇからつまんねー」
 …一体、私にどうしろと言うのか。

 5月、校外学習は正直気乗りがしなかった。班行動とはいえ、友達なしではディズニーランドも居心地が悪い。1度は参加を辞退するも、学年副主任の強い説得にしぶしぶ参加を受け入れた。
 案の定、バスの座席は私だけ1人。同じ班のメンバーは男2女4で、そのうち1人は別の班であまった男とペアを組む事になっており、計算上、男1女4で席を決める事になっていたが、私がペアを組むと予想した女の子は私より男を選んだ。それに気付き、担任は同じ班の女子に私とペアを組むよう指示したが、皆は「クサソウ、これでいいよね?」と言って、そのまま当日の朝を迎える。
 不安の中、意を決して乗車すれば自分の席がない。皆、私の存在を忘れているかのように、一列詰めて座っている。私にはそれがわざとやっているように思えた。
 ━━もう嫌だ、逃げよう!!
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