ブルーローズ ~私が死んだ理由~
17.満たされぬ想い
 専門学校に入学して最初の冬、私は19才の誕生日を迎えた。体だけは人一倍大きいくせに、内面はまるっきり子供で、年をとるたび、同級生との差を痛感する。
 2月半ば、春休みに突入するにあたり、私達は始業の日時を全く知らされていなかった。
 「先生、いつから学校始まるの?」
 そう問う生徒らに、副担任は「まだわからないんだ。わかり次第、何らかの形で教えるから」と、答えた。掲示板か電話か手紙か…これから地方の実家に帰省する生徒もいる事を考えれば、電話か手紙だろう。
 私は春休み中、ずっと連絡を待っていたが、時はたち、4月に入ってからも一向に連絡がくる気配はなかった。
 ━━━もしや、自分だけ知らされていないのでは?
 不安の中、母は何度も『休学』を口にする。だが、それは娘の心の病を心配しての事ではない。中学時代、「診断書を出せ」と学校に言われ病院へに行った時のように、今度も学校に言われたから休学させ、病院に連れて行こうとしている。
 「もう、学校始まってんじゃない?」
 焦りと不安の中、ようやく連絡がきたのは始業から2日目の事だった。
 「学校がいつから始まるか、わからなかった」
 受話器越しに伝えると、今度の担任・安部は私にこう言った。

 「だったら、友達に聞くとか学校に電話すればすむ事でしょ。そんなの理由にならないよ!!」

 途端に涙がこぼれ落ちた。
 友達なんて…いない。


 翌日、個人面談のため、上京。
 私と谷川は1組、宮沢・村田・野々原が2組で、これで谷川が私とペアを組んでくれれば、1年間、孤立する心配はいらないと期待は膨らむ一方、担任の人事な態度に失望は隠せない…
 愛や谷川が私を心配してると聞かされても、口先だけの優しさなら意味がない。「悩み事はあるか?」と問われ、打ち明ければ、「自分から話しかけられないじゃなくて、話しかけなくちゃ! それに、この年になってイジメをする人なんていないよ」と、ケラケラ笑ってみせる。
 高校生の頃、ある教師が言っていた。「大人にもイジメの世界があるんだよ」…と。 
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