ブルーローズ ~私が死んだ理由~
18.中退
 小5に始まった遅刻癖は、それまで注意される事はあっても「欠席4回で即 特別補講。1科目あたり5万払え!」なんて、精神的に追い詰められる事はなかった。
 「明日は○時に起床だから、あと△時間しか寝れない」
 時間を意識すればするほど眠れず、朝方わずかにまどろむ日々。2時間半という極端に少ない睡眠時間の中で、「あと10分…」と2度寝3度寝を繰り返しては、また今日も遅刻してしまう。
 逆に休日は時計を気にしない分、寝つきも良く、母に「バイトする気はないのか?」と文句を言われつつ、昼過ぎまで寝ていたりする。
 午前7時、自宅を出発。座ったまま通学するなら6時代の方がすいているが、これ以上、睡眠時間は減らせない。毎朝、電車に間に合うかギリギリの時間に家を出ては、競輪選手並の速さで駅までの道のりを急ぐ。
 朝のラッシュは仮に座れたとしても、駅で降りれず乗り越しは確実。ドアが閉まる前に降りるには、ドア付近にずっと立っているしかないが、こんな私でも痴漢にあう事は度々あった。
 …が、どういうわけか私はそれが嫌じゃない。被害にあう=魅力がある証拠だし、汚物のように扱われてきたこの体に、異性が自分から触れてきたという行為が、優しさや愛だと錯覚してしまう自分がいる。
 その異常な心理状態が招く悲しい未来を、私はまだ知るよしもなかった。


 学校も2年に進級してからは休日が立て続けに潰れ、時には魂が抜けたように立っているのもままならない状態で、睡眠不足による疲れのせいもあるが、精神的な問題の方が遥かに身を滅ぼしていたように思う。
 ある日、保育内容の授業で“読み聞かせ”をする事になり、私はその日のために1冊の絵本を購入した。昼食代は1年の時から受け取っていないため、小遣い5千円からの痛い出費だった。
 しかし、同じ本を別の人が読んだ事があるという理由で、翌週、新たに別の本を持参するよう言われる。それも「休んでたので知らなかった」と答えたら、
 「だったら、友達に聞けばいいでしょ」
 友達のいない私には、あまりにも酷な仕打ちだった。
 その日から、保育内容のある火曜の一限は下痢で休むようになる。
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