ブルーローズ ~私が死んだ理由~
美容師には写真を撮られ、会場に行く前から気分は最悪。
 「忍ちゃんキレイなんだから、下向いてなくたっていいんだよ」
 「わぁ、素敵」
 ここでいくら私が光って見えても、会場に着けば誰の目にも止まらないはずなのに…
 近所に住む祖母の弟が送迎を名乗り出てくれたが断った。親戚嫌いを理由にバスで行く事を選ぶ。
 その後ろ姿に、祖母は「なぁーに、見せびらかしたいんだよな」と笑い、母はビデオカメラ片手に付いてくる。バス停まで5分か10分の道のりに近隣住民が次々と現れ、「あの子は不登校だったから、頭がおかしい」と、かつて噂したであろう住民達の視線と誉め言葉に、そのままの意味で受け止める事が出来ない。誉め言葉が真逆の「汚い・みにくい」に聞こえ、何を言われてもお世辞にしか思えなかった。「みにくい」と言われ続けた私は、誉められるたび、傷付いていく。

 会場となった公民館では、晴れ着姿の若者が久々の友との再会を喜び合い、その中で私は1人ぼっち。寂しさから、数ヶ月前に死んだハムスターの写真を取り出し、あの人懐っこい性格と柔らかな毛の温もりを思い出す。財布には母からもらった1万円札が数枚。「友達と帰りに食べに行くといけないから」と渡されたものの、そんな事あるはずもない。
 適当に着席したら、間に3つ席を置いて、私の右側に高校時代の顔見知りがやって来た。彼女達は昔と同様5・6人の群れで、高校生の時に出来た友達は一生の友達とするなら、高校で孤立していた私は一生ひとりぼっちなのかと、ますます悲観した。
 マスカラを気にして泣く事も出来ず、バスで帰る気分でもない。散々、孤独という屈辱を受けながら、それでもまだ未練タラタラに何度も何度も後ろを振り返っては、会場から出る車の列に、わざとゆっくり歩いて「私の存在に気付いて」と、願いを込める。
 結局、何のどんでん返しも起こらなかった。

 帰りは近隣住民を避け、わざと遠回りして帰宅。私は着替えるとすぐに布団に潜り込んだ。
 帰宅した母はその事を知ると、私を真っ先に叱りつけた。
 「あんた、そんな嫌い嫌い言ってたら働けないよ。写真も撮ってこないで、何のために行ったの!!」
 私と違い、人間関係に恵まれた母には一生わかるまい。
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