ブルーローズ ~私が死んだ理由~
 同じ頃、偶然見つけた古い手紙には、一瞬、言葉を失うほど衝撃的な内容が書かれていた…

 “ 忍、おまえは自分のしている事がわかっているのか。家の中で火を燃やして、もしも家が焼けて誰もいなかったらどうするの? 近所の人にも迷惑がかかるし、それがわからない大バカは生きていても仕方がない。お父さんのように死んだ方がいい”

 小6の頃、祖母にゴミ箱の中身をチェックされるのが嫌で、空き缶を使い、部屋でゴミを燃やした。親が子供の日記を盗み読むように、祖母はゴミ箱から私のプライバシーを侵害し、そのオシャベリな性格から外部に公表される事を思うと、あの時は自分で燃やすしかなかった。

 祖母は私の死を、父と同じ自殺を望んでいる…

 その事実が、あの日無理矢理封じ込めた自殺願望を、じわじわと蘇らせる。
 机から便箋を取り出し、先にクッキーのお礼を手短に、続けてこの件に触れ、自己紹介として、父の自殺からこれまでの経緯を綴った。
 1週間後、届いた手紙には、彼女が忠実なクリスチャンである事、私を哀れんでいる事などが書いてあり、彼女がクリスチャンである事は、私の彼女に対する印象をますます悪くした。クリスチャンなら哀れみは当然の行為で、私は宗教や専門家とは何の関わりもない、一般の感想を聞きたかったのだ。
 第一印象からお礼の手紙さえ渋っていた私が、初回から便箋7枚も書いたのは、彼女を信頼してではなく、他に話を聞いてくれる人がいない、それだけだった。
 その後も私達の文通は続き、言葉のキャッチボールを基本に、興味のない話もそれなりに返信するが、手紙には宗教的な言葉が触れ、回を重ねる毎にそれは酷くなるばかり。キリスト教関連の本を贈られたり、文面にそんな言葉を見つけては、私を救ってはくれない神様を慕う彼女を、けして、好きにはなれない。
 「中絶、反対!!」と送られてきたビデオも、バラバラにして吸引機で吸うというような手術の詳細や、ホルマリン漬けの胎児の映像に、妊娠すること自体が怖いと考えるようになる。


 やがて、シューレに私より1つか2つ年下の森君がやって来た。私は同じ年頃の異性として彼の関心を引いたらしく、「友達はいない」と答えた事で、誰が見ても精神病の彼に恋愛の対象として気に入られてしまう。
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