Stare Melody
番外編 転校生のモノクロなモノローグ
私は、あの笑顔が嫌いだと思った。


初めてあの人と出会ったとき、あの人は凄く輝かしく見えた。誰からも好かれ、そして尊敬されている、そんな風に見えた。
しかし「椎名くん。」女の子たちが甘い声でその名を呼ぶことに吐き気もした。下心丸見えのその声を、あの人は笑って流した。
正直凄いと思うのと同時に、怖いと思った。嫌いだった。
皆に同じように返す笑顔。寸分の狂いもない、造られた微笑み。何を考えているか分からないような胡散臭い笑み。そして、不自然なくらい紳士的な優しさが。ポーカーフェイスはいつも上手くて。
女の子たちはいつも熱っぽい視線を送り、目立とうとしてきた。けれどあの余裕の笑みで制してしまう。優しいけど、とても冷酷な人。
もしかしてアンドロイドじゃないかと疑ったときもあった。私はその嘘臭い優しさには騙されないぞと思った。
だけど、出来なかった。

傍に居るようになればなるだけ、自分が惹かれていくのが分かった。それに、離れれば心配掛けて、輪をかけて優しくなる。こんなの板挟み状態だ。
軽く逃げ道を作れば、またそんな綺麗な悲しそうな顔。それでも私はこっちの人が好きというフリをした。そうじゃないと、心がもたなかったから。
私は新垣くんに相談をしていた。そして逃げ道になってもらっていた。そうするとね、あの人は表面上悲しそうにするし、嫉妬もしてくれる。そんなことしたら自惚れるだけなのに。
私はちょっとだけ、愛されてるのかなと思った。本当は告白する勇気も、傍に居る勇気も無かったのだけれど。
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