秘密


何だろ?
ふわふわしてて気持ちいい。

何してたんだっけ俺?

…ああ、そうだ。
五時間目サボって屋上で昼寝してたんだった。

そろそろ起きないとな。

でも何だ?この頬にあたる柔らかい感覚は?

手を伸ばしそれに触ると、

「あ。起きた?佐野君?」

透き通った綺麗な声が頭の上から聞こえてきて、顔を上げると奏が俺を優しく笑って見下ろしていた。

「……奏?」

「起こそうかと思ったんだけど、気持ち良さそうに寝てたから…」

軽く頭の中を整理しよう。

俺は横になっている。
直ぐ真上に奏の顔。
頭は彼女の太ももの上。

俗に言う、膝枕と言うやつ。

確か五時間目サボって昼寝していたはず。
何故奏がここに居る?

「…今、何時間目?」

「もう放課後だよ?佐野君戻って来なかったから、様子見に来たら、まだ寝てるんだもん」

あれからずっと寝てたのか俺は。

「…何で奏の膝に俺の頭が?」

「…それは…私がここに座ったら…佐野君が寝惚けて…頭乗せてきたんだよ?」

……マジか?
何も覚えてねぇ、はは。

しかし膝枕ってホントに気持ちいいんだな?

奏の膝に頭を乗せたまま腕を伸ばし、奏の腰に手を回す。

「…佐野君?まだ寝惚けてる?」

「……多分」

「多分って…」

「……気持ちいい…」

思わず言葉に出してしまった。
それ位奏の膝枕は心地よくて、ずっとこうしていたかった。

「…佐野君、今日バイトは?」

…あ。

バイトに行かねば…

「…今、何時?」

「もうそろそろ17時」

…ヤバイ、かなり寝ていたみたいだな。

…はぁ。
起きるか。

俺は身体を起こし、両手を上げて大きく伸びをした。

「…あ。奏、ここまで登ってきたの?」

「え?…うん」

「怖くなかった?」

「ううん、高い所好きだから、平気」

そう言えば前にフェンスによじ登ろうとしてたな。

「…ここ、ホントに気持ちいいね…」

隣に座る奏の髪が、風になびき、ふわりと俺の方に流れてきて頬をくすぐる。

それを手に取り、奏の後ろに流してやり、その手をそのまま奏の頬に。

お互い見つめ合い、ゆっくりと顔を近付ける。



< 107 / 647 >

この作品をシェア

pagetop