秘密



やり方なんてわからなかった。
初めてだったし。


「…あっ…あかねっ…はっ…あぁっ…」


俺の下でマナミがいやらしく声を出す。


うるさい。

喋んな。

気が散る。


お前は奏の代わりだ。
静かにしてろ。


俺は目を閉じ、マナミを抱きながら、頭の中で奏を犯していた。


身体中が痺れたような快感が押し寄せてくる。


…奏


……奏…


……俺…もう…










呆気なく俺の初体験は終わった。


マナミは何事も無かったかのように、制服を整えて、先行ってるね。と視聴覚室を出ていった。


俺は暫く呆然とその場に座り込んでいた。


じわじわと罪悪感が押し寄せてくる。


何やってんだ?俺は…


マナミを抱いても奏が俺のモノになった訳じゃないのに。


たまらなかった。
我慢出来なかった。
奏のあんな姿を見てしまったから。


初めて会った時とは別人みたいだった。


辛そうに男を受け入れる奏は、見ているだけで辛くなってくる。


その姿に欲情した俺はもっとサイテーだ。


「……ははは…」


乾いた笑いが出る。


立ち上がり視聴覚室を出ると、足が保健室へと向かう。


奏達はもう居ないだろう。
俺が飛び出したから、慌てたに違いない。


まだ授業中の教室に戻る気にもならないし、区切りのいいところまで時間を潰そう。


正直あまり戻りたくはないが、他で時間を潰す方法が思い付かない。


保健室のドアを開け中に入ると、奏が居たベッドはまだカーテンで仕切られたまま。


先生は居ない。


俺はわざとらしく少し大きな声を出した。


「…せんせー、居ないの?」

「…あの…先生は、研修で…出掛けてるそうです…」


カーテンの中から奏の声がした。


もう男は居ないか…当たり前か?


俺が飛び出した後に男も慌てて出ていったんだろう。


俺はカーテンに近付き少し開け、顔だけで中を覗き込んだ。


さも今来ましたと言わんばかりに。


すると奏は身体をビクッとさせて驚いていて。


その顔は涙で濡れていた。



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