秘密
運ばれてきた料理を平らげると、奏が席を外し、すかさずそこに貴司が座り込んできた。
…どけよ貴司。
そこは奏の席だ。
奏、どこ行った?トイレか?
「茜。お疲れ、今日のお前マジ凄かった!も、感動!」
俺の肩に手を回す貴司。
…こいつ…酔ってんのか?
ソフトドリンクで酔えるんだな?貴司は。
「あれ?奥村さんは?」
お前…奏が居ないからそこに座ってるんだろ?
「…トイレじゃね?」
「え?奥村さん、トイレとか行くの?」
…人間なら誰しも行くだろ?普通…
「…やっぱ、兄貴属性だ…」
「え?何か言ったか?茜」
「…いや…何も」
「奥村さんなら用事があるからって、さっき帰ったよ?」
沢田がそう言うと、
「えぇ〜?帰ったの?奥村さん」
がっくりと肩を落とす貴司。
……奏、俺に黙って帰ったのか?…
ジャージのポッケットの携帯が振動して、取り出し開くと奏からのメール。
『私、先に帰るね?お父さんも今日帰ってくるし。
その前にシロにご飯あげにアパートに寄ります。』
パチンと携帯を閉じる。
「疲れたから俺も帰る」
鞄を肩に担ぎスタスタとレジへ。
「え?ちょっ、茜!今からみんなでカラオケ行こうって話してたのに!」
…カラオケだと?
どんだけタフなんだ…お前は…
「わり、マジで疲れたから、それにこの頭、なんとかしないと」
頭を指差す俺。
「は?頭?そのままでいいじゃん?桜木君」
「スラムダンクごっこは今日だけ…それじゃ、お疲れ、流川君」
会計を済ませて足早にバス停へと向かう。
さっき出てったんならまだ間に合う。
角を曲がると黒髪ロングの後ろ姿を発見。
「奏っ!」
立ち止まりふわりと髪を靡かせて振り返る奏。
「…佐野君」
「俺も帰る、一緒に帰ろう」
「…でも、今日の主役が帰っちゃっていいの?」
「主役?なんだそれ?」
奏と並び歩き出す。
「今日のヒーロー佐野君」
「ヒーローって…やめてくれ…」
「ホントの事じゃない、生徒も先生達もみんな佐野君に魅了されてたよ?」
笑う奏。
そんな奏に俺が魅了されてる…