秘密


「何か飲み物取ってくるから」


佑樹はそう言ってドリンクが並べられている、奥の方へと行ってしまった。

私は辺りを見回し、壁際に並べてある椅子に腰を下ろした。


……足…痛い…


慣れない靴は苦痛でしかなく、今来たばかりなのに、帰りたくてたまらなくなった。


……シロ…寂しそうに鳴いてたな…
可哀想な事しちゃった。


「あれ?奏ちゃん?」

不意に名前を呼ばれて顔を上げるとそこには、

「…カケルさん?」

「あはは。凄い偶然、綺麗な子が居るなぁって、近付いたら奏ちゃんなんだもん、驚いたよ、でも何でここに居るの?」

「あ…このビルの建設を手掛けた会社が、うちの父が勤めている会社なんです…」

「へぇ、横田建設の…奏ちゃんのパパってお偉いさんなんだね?」

「…いえ、そんな事、無いです…」

「あはは。そんな謙遜しないで、横田建設って言ったら、これからどんどんデカくなる会社だよ?あ。噂で聞いたんだけどさ?このビルも横田の二代目、まだ高校生らしいんだけど、そいつが色々と意見出して建てたらしいよ?見なよこのホール、ただ広いだけじゃない、空調も省エネ考えられてて、かと言って昭明に余り頼らずこれだけ明るい、代替わりしたら海外とかにもバンバン進出していくだろうな…」


何故か少し興奮気味に熱く語るカケルさん。

…そうなんだ、私全然知らなかった。
横田建設ってそんなに凄い会社だったんだ…


「あの、どちら様ですか?」


見ると佑樹がグラスを2つ持ってカケルさんの後ろに立っていた。


「え?どちら様って、この子の知り合いだけど…きみこそ誰?」

「奏の知り合い?…僕は横田と言います、そっちの彼女は僕の婚約者です」

佑樹?!

なんて事言うの?!
カケルさんは佐野君の知り合いなのに……

「え?横田って横田建設の?えっ?婚約者?…え?」

「はい。横田建設の社長の息子です、佑樹って言います、貴方は?何故奏と知り合いなんですか?」


……もう…ダメ…


「…あっ…俺はこのビルでケーキショップ出させてもらう、御村翔(ミムラショウ)って言います、彼女はうちにアルバイトの面接に来てくれたんですよ」


と爽やかに笑うカケルさん。


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