秘密
……佐野君…
まだ帰ってなかったんだ。
心配して来てくれたの?
私は身体ごと振り返り、佐野君の背中に手を回し、ギュッとしがみついた。
頭に掛けられていたのは佐野君のブレザーだった。
振り返った拍子にブレザーが落ちてしまい、佐野君はそれを拾うとまた私の頭に掛けて、再びギュッと抱き締めてくれた。
「…雷が苦手だったんだ、奏は…」
…奏。
今度は名前で呼んでくれた。
嬉しい。
嬉しいよ、佐野君。
「…うん…」
私は佐野君の胸に耳を押し付けた。
…トクトクトク…
佐野君の心臓の音が聞こえる。
以外に早い心音に私は落ち着きを取り戻し、まだ雷は鳴り止まないけど、恐怖感はなくなっていた。
佐野君。
ありがとう。
佐野君は優しいね。
佑樹とはホントに正反対。
何故か涙がポロリと溢れた。
何でかな?
佐野君が優しいから?
私の事心配して来てくれたから?
佐野君の腕の中安心する。
「…奏?泣いてる?まだ怖い?」
佐野君は腕を離し、頬を両手で包むと、私の顔を上げた。
私は佐野君のその優しい表情を見たら、さらに涙が溢れた。
佐野君は少し困ったように笑うと、私の瞼にキスをくれた。
「…はは。しょっぱ…」
笑うと、もう片方の瞼にキス。
次は額に。
鼻に。
頬。
耳。
少し顔を離してお互い見つめ合う。
私はゆっくり目を閉じる。
私達の関係は、誰にも秘密だけど。
……佐野君。
………キスして。