秘密



「おはよ。奏」


いつもは下ろしているロングヘアを、今日はポニテにしていて、朝から俺の心に矢を刺す奏。


「おはよう。佐野君、宮地君」

「おっ、おはよう!奥村さん!」

「宮地君、白がどうしたの?」

「沢田のパ…んっ…」

「わーーっっ!!」


貴司から口を塞がれる俺。


「沢田さん?沢田さんがどうかしたの?」

「なっ、何でもないよ!あははっ!おいっ!茜っ、行くぞ」


口を塞いだまま、貴司は俺を引きずって、廊下を急いで歩き出した。


口と同時に鼻まで塞がれてしまっていた俺は、貴司の手を引き剥がした。


「ぶはぁっ。苦しいだろが」

「お前俺の事投げただろ?これでおあいこだ」

「その前にお前が背中に乗ってきたんだろ?」

「へ?そうだっけ?」

「……お前、自分に都合の悪い事は直ぐに忘れるみたいだな?」


貴司と二人階段を上がりながらそんな会話をしていると、中央の踊り場に女の子達が集団で固まっていて、それを見た貴司が。


「ん?何やってんだろ?」


その集まりを覗き込んだ。


踊り場に来てみると、その中心にいたのは美樹で。


「美樹ちゃん、何やってんの?」


俺が声をかけると、女の子達は一斉にこちらを振り返ると。


「きゃーっ!」
「本人だーっ!」
「佐野先輩っ!セクシー!」
「脱いでもスゴいんですね!」
「かっこいーっ!」


囲まれてしまった。


「ちょっと!内緒なんだから!静かにっ!しぃーっ!」


あのさ?
そう言う美樹ちゃんがいちばんうるさいから。


「で?何やってんの?」


再度同じ質問をする俺。


「なっ、何でも無いわよ?あははっ。さ。みんな、続きはまた後でね?」


「ちょっと、なんか落ちたよ?」


バラけ出す女の子の一人から紙切れが落ちて、拾って見てみると。


「………何コレ?」


先日の海水浴でのビーチバレーのショット。


「え?きゃーっ!なっ、何でも無いわよ?あ…あはは」


美樹がそれを素早く俺から奪い、女の子に渡していた。



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