秘密
他にも幾つか質問されたけど、どれも俺には答えられなくて。
奏の事を何でも知ってるつもりでいたのに、それは俺の思い上がりだったみたいで、俺は俺と一緒に居る時の奏しか知らない事に、今さら気付かされた。
医師の質問が終わる頃、処置室の扉が開いて、俺はベッドごと運び出される奏に駆け寄った。
「奏っ!」
白い顔をした奏の口元には酸素マスク。
頭には包帯。
「奏はっ?大丈夫なんですか?」
処置室から一緒に出てきた医師にそう訊ねると。
「これから検査に向かいますので、まだはっきりとは……、詳しい事は後程…、失礼します」
その場に俺を置いて、俺に質問してきた若い医師も、そのまま奏のベッドと共に検査室へと向かっていった。
俺はそこに立ち尽くし、それを見送る事しか出来なかった。
奏を助けたいのに。
何とかしてやりたいのに。
俺にはどうする事も出来ない。
それが悔しくて、自分が情けなくて、もし奏が居なくなったら……、なんて、絶対にあってならないような事まで考えてしまっている自分に無償に腹が立つ。
結局今まで俺は自分の事ばかりで。
奏が居なくなったら自分が嫌だから。
自分が寂しいから。
自分が悲しいから。
奏の気持ちも考えないで、俺は自分の気持ちばかりを優先させて……
奏と一緒に居ると俺が満たされるから。
それで奏が辛い思いをしているって心の中ではわかっていた筈なのに、それでも奏と一緒に居たくて。
自分の気持ちばかりを奏に押し付けて、結果が……
始めから俺なんかが奏に関わらなければ。
奏をこんな目に合わす事は無かったかも知れないんじゃないだろうか?