秘密





カケルは昨夜、店が開くと同時に奏の事を心配して響屋にやって来て、美樹からも聞いて知っているだろうけど、取り合えず奏は無事だと言う事は伝えていた。



「来てたんだ、カケルさん…」



エレベーターの[開]のボタンを押しそう言うと。



「うん。心配でね…」


「じゃ、俺、行くから」


「あ。ちょっと待て」



ボタンから手を離し出ようとすると、カケルが俺を引き止めた。



「佑樹君が来てる」



閉じかけたエレベーターに片手ついて、カケルは箱の中に俺ごと押し込み、そのまま扉が閉まる。



「ちょっ…」


「ちょっと、外で話そうか?ここじゃ煙草も吸えないし」



カケルに言われるがまま、俺は再び下へと降りていく。



エレベーターから降りると通路を歩き、病院内の幾つもの棟の間に位置する、広々とした中庭まで連れて来られた。



車イスで散歩する患者や、息抜きで煙草を吸っている医師や看護師。



噴水まであるこの中庭ではしゃぐ幼い子供の笑い声を聞きながら、その近くのベンチに腰を下ろした。



カケルは黒い箱から煙草を取り出し火を着ける。



吸い込みゆっくりと煙を吐き出すカケル。



いつまでも話し出そうとしないカケルに痺れを切らし、俺は口を開いた。



「……何で、カケルさんが佑樹の事、知ってんの?」


「ん?ああ…、奏ちゃんの婚約者だろ?彼…」


「……そんな事まで…、知ってんだ」


「以前駅前ビルの完成披露パーティーの時に挨拶したんだよ、あのビルは佑樹君の家の会社が建設してるんだ。佑樹君からその時に、奏ちゃんは自分の婚約者って紹介されたから」



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