魔憑攻殼戦記 深紅の刃
 通常、魔憑攻殼の武器は素材のままの色か塗装の色だが、第三段階になると、稀にその魔操士固有の色に染まる場合がある。

 固有色を出す魔操士はそれだけ、自分と魔との同調が高い事を意味し、それはそのまま強さを意味する。

 固有色は、魔憑攻殼に関係なく魔操士の色が出る為、固有色で魔操士を特定することが可能だった。

「まさか、姫良鬼凛《ひめらき りん》」

「こいつ、インジェン」

 互いの顔が脳裏に過る。

 甲虫型の魔操士インジェンは、その隙を見逃さず、左手の爪で鎧武者型の頭部を殴りつけた。

 凛は、首を振ってそれを避けると同時に後方へ下がった。

 ぎりぎりで爪が頭部の右頬の辺りを掠める。

「ちっ!」

 凛の右頬に、うっすらと三条のミミズ腫れが浮かぶ。

 固有色を持つ魔操士は、魔との同調率が高い。

 だが、それはそのまま魔憑攻殼のダメージを自分にフィードバックさせてしまうことにもなった。

 つまり、魔憑攻殼のダメージを魔操士も受けてしまうのだ。

「まさか、深紅の刃、姫良鬼凛が生きていたとはな」

「新緑のインジェンがこんな辺境で偵察任務とはね」

 魔に同期した者だけが得られる共感能力によって、互いの言葉が伝わってくる。
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