いつか咲く花【企】


「………ふぅ。」

屋上に上がり、深呼吸。
空は綺麗な青空だった。

鱗みたいな雲が浮かんで、空はすでに、秋の空に変わっていた。


「…もう秋か……。」


そういえば、茂音君がアネモネは秋植えだと話していたのを思い出した。

可愛くて赤い花。

両親に見せればきっと何かが変わる。
そう思って、探していたアネモネ。


だけど。


見せたって変わらないかもしれない。
育てたって花は咲かないかもしれない。


それに私だって、合格は難しいかもしれない……
合格しなければ、家から通えば、両親は別れないかもしれない。


考えれば考えるほど、嫌な気分になる。
あの日から止まない雨が心を曇らせてる。

解っていても…

空は晴れなかった。


< 36 / 51 >

この作品をシェア

pagetop