きみの声がきこえない

あたしの形のない悩み


「栗ちゃんさ~、ちょっとつきあってよ」

「…何?」

「ちょっと今月ピンチでさー。ちょっとお金貸してくんないかな?」


――いやだ…!

どうして俺はいつも舐められるんだ?

こんなどうしようもない奴なのに、

どうして何も言い返せないんだ、俺は。



休み時間、

ききたくないのに、きこえてしまった。


ひ弱な栗原が、

いつものように不良大木に肩を回されている。


――また繰り返しか。

罪悪感はないわけじゃない。

でも、俺をこうしてしまった世の中が悪いんだよ。

もう俺は後には引き返せねぇ。

引き返し方なんて分かんないもんよ。

でも一生こうやって生きてくのか?俺は。



大木の声まできこえちゃったよ。

不良には不良の悩みがあるらしい。


どうしよう。

この二人の言い分をきいたところでは、

やめさせるのが一番だ。


でも、どうやって?


そうだ。
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