きみの声がきこえない

秀くんを改めて見る。

髪は染めてなくて、おっとりした瞳、やさしい微笑み。

落ち着いた低い声、大きくて綺麗な手。


秀くんは高校生の男子とは全然違う。

あたしにとっては、秀くんは本当に大人の男性だ。


何でも知ってて、何でも優しく話を聞いてくれて。

あたしは秀くんに憧れがある。


これが好きって気持ちなのかは正直分かんない。

でも、秀くんといる時間が好き。


でも秀くんに恋愛の話を持ち出すと、いつもうまくかわされる。


秀くんからも、心の声がきこえてくる。

いつも同じ。



――レイカに会いたい。



「ねぇ秀くん」

「んー」

「レイカさんって誰?」


秀くんがカチャっとカップを置いた。

そして、驚いた顔であたしを見た。



あたしはその時、

秀くんはあたしの能力を本当に信じたかもしれない、そう思った。
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