ご主人様に首ったけ!
「ふふっ」


違うのかもしれない。

私のうぬぼれかもしれないけれど……。


その結論を考えれば考えるほど嬉しくて、嬉しくて私は思わず笑みを零してしまった。


当然それは霧様の耳にも届いてらっしゃって……。


「こら、露。
何を笑っているのかな?」

「きゃーっ、ごめんなさいっ!」


軽く頭を掴まれてしまい、私は必死に謝ったけれど、もちろんそれが霧様の本気のお怒りではないと分かった上でのじゃれ合い。


でも……実際霧様は私のことをどう思ってらっしゃるの……?


なんてちょっと贅沢な想い。

わしゃわしゃと髪をかき乱されると、霧様は頭から手を離されて、


「ったく、ほら露。本当に遅くなってしまうからもう帰るよ」


再び私の前に手のひらを差し出してくださった。


そして私も、さっき取り損ねてしまった霧様の手をしっかりと掴み、霧様の後に続いた。



霧様の手のひらの体温を感じながら……。


二人でいられる嬉しさを感じながら……。


私たちは、帰路に着いた。


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