ご主人様に首ったけ!
そう言って顔を背けた霧様の横顔は少し赤くて……。


…もしかして、霧様はこの間と同じように?

そんなうぬぼれという感情が再び私の中にわきあがってくる。


そう思うと、自然と顔が綻んでしまうのは止められなくて。


「霧様?ご安心ください、私は霧様以外の方をお慕いする気はありませんよ?」


覗き込むように、ちょっと意地悪く言ってみると、霧様はますますその綺麗な顔を赤く染められて、


「……露?主人をからかうなんて、いい度胸だね」

「きゃーっ、ごめんなさいっ!!」


頭を大きな手のひらで掴まれ、髪をかき乱される。


そんな他愛のないやり取りが、たまらなく心地よくて、私はその幸せの余韻に浸っていた。



でも、そんな幸せも長く続かなくて……。


私と霧様の歯車は、聖ちゃんと神くんに会ったときから少しずつ――


本当に少しずつだけど、ずれ始めていたんだ……。


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