激愛パラドックス
「…そういえば」
沈黙を破ったのは思い出したように口を開いたユキだった。
「なに?」
「コンタクト、探してくれたのセンパイだったんですね!ありがとうございました」
律儀に頭を下げるユキに「あぁ、別に」と答える。
あん時は、かなり危なっかしかったなぁ…。
「センパイは、本当は優しいんですよね?普通だったら、ほっときますよ」
「…そうか?」
いや、あの状態だったら誰でも声かけると思うけど…。
どんくさい上に天然か?
「そうですよ!だって、両方コンタクト取れた女なんて、関わりたくないじゃないですか?なのにセンパイは一緒に探してくれて洗浄液まで…はっ!洗浄液弁償しないと!!」
コロコロと話を変えるユキに、笑いを堪えるのが必死な俺。
「…良いよ、そんなの」
篤史のだし。
「でも…」
困ったように瞳を揺らすその目はチワワそっくり。
「ハハッ…」
「へ?」
「お前って面白いヤツだな」
ユキは自分が笑われている意味が分かっていないのか不満そうな顔をしている。
そんな顔ですら笑えてくる。
「笑わないで下さい!」