激愛パラドックス
だからといって、ユキが俺を本気で好きだとはいえない。



コイツだって、あの人みたいに俺を捨てるんだろ?



心の中から無理矢理ユキを追い出そうとする。



もう一度立ち上がると、掴んでいたユキの手は簡単に離れていく。



「…先に戻れ」



この高校、ガラ悪すぎるんだよ。



ユキがどうなったって良いはずなのに………。



首を振るユキに、ハァと溜め息が漏れる。



「先に…行ってくだっ…さいっ」



シャクリ上げるユキに、罪悪感がひしひしと募る。



……こんなに苦しいなら、最初から近づくんじゃなかった………。



自分の行動に、今更ながら後悔する。



だけど、止められなかった。



ユキを見ることが……。


「……翔センパイ」


遠くから聞こえる声の方に目をやると、雅也の姿があった。


「交代」


「…はっ!?」


俺の言葉にユキは体をビクつかせ、雅也は怪訝な顔を見せた。



ダルそうに歩いてくる雅也は、ユキの泣いてる姿を見て、俺を一瞬睨んだ。



…コイツ。




< 86 / 118 >

この作品をシェア

pagetop