戀愛物語
  
瞳を細めた彼の微笑みは、誰もが見とれるほど美しい。
そのことを本人が十二分に理解しているということも、巡にはわかっていた。

「あきらめなよ」

「お前があきらめろ」

「ふふ、絶対いや」

ぐしゃりという音が響き、幹が抉れる。
遡羅が握っていた拳を開くと、木屑が落ちて地面に広がった。

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