空音
この日から毎日、俺はクラブが終わり次第妃奈に会いに行くようになった。
特に用事があるわけでもなく、伝えなくてはいけないことがあるわけではないのだが。
ただ少しでも妃奈と一緒に居れる時間がほしかったから。

「淳二今度はいつ試合があるの!?また行きたいな~」

妃奈は最近よく俺の試合を見たいと言ってくれている。

「試合しばらくないからな~。。また試合が決まったら一番に連絡するからね!!」

「うん!!約束だからね!!」


本当は試合の予定はもう入っている。でもそのことは妃奈に秘密にしている。
いや、秘密にしなくてはならないという方が正しいのかもしれない。

理由はこの間妃奈のお母さんから話があるといわれて病院の屋上で言われたこと。

「淳君?今日お医者さんに言われたの。妃奈はもう外出をすることはできないんだって。
 体の抵抗力も弱くなってきているし、いつ倒れることがあるかもわからない、これからは薬の投与量も増えるし、本人・家族にもつらい時期になるんですって。」

お母さんはそのことだけをいい、あとはただただ泣くだけだった。
そのときは泣いているお母さんを目にし、何もできないまま呆然と立ち尽くしているだけだった。

しばらくして俺が言えたことは

「お母さん。妃奈に少しでも笑ってもらえるように、毎日ここに来させてください。」

お母さんはゆっくりとうなずき、僕にありがとうと言ってくれた。
本当は一番つらいはずなのに。
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