キミノトナリ(短編)
「大人がそんな考えなんだ。それを当たり前に受け止める子供は、その考えが顕著に出る」

学校というものは小さなコミュニティーだが、だからこそその時代の情勢が凝縮され現れる。

「…その男の子ね。あまり頭良くなくてね、苛められっ子なの」

先を促すように老人は頷いた。

「だからその子はからかう子にとって『同じでない』モノで、『支配』したいのね。だから『生意気』なんだ」

少しだけ儚い表情に変わった少女に、老人は小さく呟いた。

「それが、大人から見た意見だよ。加害者と被害者としてしか見れない、大人の言葉だ」

不思議そうに見返してくる瞳に、老人は眩しさを感じた。

「知っているかい?支配欲というのはね。愛して欲しい、理解して欲しいという気持ちが増長して生まれることもあるんだよ」

だから、その男の子たちは、全員が哀れみの対象なのだ。

老人の言葉に少女は目を真ん丸に開き、そしてわずかに微笑んだ…ようだった。

「…哀しいね」

「…そういえるなら、君は優しいな。これからは、そんな子供たちが世界を作る」

できれば、その世界は優しくあって欲しい。

わずかな沈黙。

「…おじいさん、またお話させて?」

小さな呟きに笑みがこぼれる。

「いつでも来なさい。私はここにいる」

立ち上がって手を振った少女は、軽やかに走っていった。

それを見届けた老人はゆっくりと、再び川に視線を戻す。

「本当に、いつか」

全ての子供たちが、ただ笑っていられる世界が見れるならば。

「…人とは、本当に愚かだな」

小さく笑った老人の姿は、次の瞬間にふわり、と消えた。
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