きみに伝えた気持ちは(短編)

 バレンタインデーの日。

 家に帰って・・・、珍しく九時前に帰宅していたお父さんに、転勤のことを聞かされたんだ。

 あれから、ほぼ一ヶ月。
 


「チョコ。芽生からもらったのだけはちゃんと、おれがぜんぶ食べたから」

「え?」

「あけてみてすぐにわかった。芽生が作ってくれたんだなってこと」

「なんで?」

「そりゃわかるよ。ミートボールみたいだったから!」

「ひどい」



 手を振り上げて、遼をたたこうとすると、その手を大きな手のひらが優しく受け止めてくれた。

 にっこりと私を見て、笑う。



「でも、味は最高に甘くて、おいしかった」

「・・・遼」

「さてっと」


 遼は紙袋の中から、さらに二つの包みを取り出した。

 右手のほうは少し大きめの紙袋、左手のほうは小さな箱。

 いたずらっぽく、片目をつぶって言う。


「大きい方と、小さい方、どっちがいい?」


 


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