仮病に口止め料




何秒、何分経っただろうか。
とりあえずキスは贅沢品だ。
ボーナスでも賄えない。

(安売り中の)恋心が詰まった熱を確かに感じる今、俺は(安易に)愛で死ねるほど幸せだし、

(一過性の恋人かもしれないのに)一生傍に居たいと願ったし、

彼女となら(まだ十八歳に満たないのに)永遠のパートナーになれると確信したし、

二人の出会いは(たまたま同じ高校を受験しただけなのに)特別な理由があると気づいた。


田上結衣と近藤洋平はお互いかけがえのない存在なのだろう。

そう、こんなちっぽけな俺なんかに、はじめて人を好きになることの壮大さを教えてくれたのは彼女だ。

生涯この愛を貫けていけたなら――――



……さてさて、感動的な鳥肌がたったここでロマンチックな状況に浸り、尊い運命について説くのはよそう。

残念。ピュアと書いてネタと読む、そんな馬鹿馬鹿しいパフォーマンスをとりたい俺だ。

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