Strawberry & Happy Birthday
No.6 手がかりを探して

自分の誕生日の次に、母の日と父の日が嫌いだった。






参観日も好きじゃなかった。







じじいが来てくれた時は嬉しかったけど、同時に寂しかった。








クラスメートはみんな、お母さんやお父さんの名前を呼んでうれしそうに手を振っていたから。










母の日や父の日は決まって親の顔を書く。






けど、私は書けなかった。





だって父さんの顔も名前も知らなかったから。






母さんの名前は知ってるけど、顔がわからなかったから。







家には、母さんが剣道で取ったであろうトロフィーや盾なんかはたくさんあったけれど。







写真は一枚もなかった。








じじいには何となく聞けなかった。







あまり母さんの話をしたがらなかったし。







だから私も聞かなかった。










でも、それって、ただ、逃げてただけなんだよね…。





知るのが怖かったから何も知らないままでいた。









ずっと、私は逃げてたんだ――。

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