ゆめ
今ある幸せをかみしめながら、私たちは希望だけは捨てなかった。
そして年月は経ち、奇跡は起こった。
私が、10代のころから見ていた夢を見なくなったころ
ゆめは私たちのところへ、また来てくれた。
「ねぇ健太、やっぱりあの時の子、ゆめだったんだね」
「なぁにぃ?」
「ん?パパとナイショ話!」
「え~?ゆめにもおしえて!」
「やだー」
「もーママのいじわる!パぁパー」
「はは、おいで」
「ママってばねー、あ、パパ、くつしたにあなあいてるよ!」
「え?ほんとだ。ま、家ん中だからいいじゃん」
「だーめー!」
「わ、わかったよ…ったく、誰に似たんだか…」
「しっかり者の健太でしょ。いつか自分で言ってたじゃない」
「ちがうよ、いちいちうるさい亜紗子似だよ」
「な…」
…口の減らない健太似だ!
なんて。
5年前、折れそうな私に諦めるなと、神様は少し早めにゆめに会わせてくれた。
んだ、きっと。

