ナルシー少年☆蛍斗くん

待ちぼうけ〜亜杜の涙〜




沈みかけた夕日に、子供達はそれぞれの家へと帰ってゆく。

着いた時には、桃汰くんと亜杜だけが公園にいるのが見えた。


隅に置かれたベンチの前でなにやら口論していた。

遠目から見ても亜杜の様子がおかしいことがわかる。

急いで近寄るが、口論の内容に私の足は止まってしまった。



「…全部、全部、全部ッ!!あんたのせいだから!!」


大きな瞳に収まりきれないたくさんの涙が頬へ伝っていた。

そして、空いている手は、何度も何度も桃汰くんを叩く。

桃汰くんは桃汰くんで"意味わかんね"と亜杜の神経を逆なでするような言い方をわざとしていて、不機嫌な様子がわかる。


すぐに止めようと思った、
だが

「矢恵っぴは蛍斗が好きじゃなきゃダメなのに…ヴぅ…」


亜杜はそう言ったのだ。

思考回路が停止したみたいだった。


"…蛍斗を好きじゃなきゃダメ?"

自分の呟(ツブヤ)きでハッと我にかえった。


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