【短編集】闇に潜む影
私は一歩前へ出た。
ひゅう、と緑色の風が私の隣を吹き抜ける。
夕日色に染まる見慣れた街並みを目に焼き付けながら、私はもう一歩前へ出た。
空を見上げる。
白い雲の浮かぶ赤い空に、一瞬、何故か青い鳥が見えた気がした。
あぁ、きっと。
幸せを運んでくれる青い鳥を見つけられなかった私の為に、
神様が最期に見せてくれた幻かもしれない。
―あと一歩だ。
青い鳥が、私の上をくるり、と輪を描いた。
心はとても、穏やかだった。
これまでにないほどに。